大学受験を考えるうえで避けては通れないのが、文系・理系の選択と志望学部・学科選びです。気をつけるべきポイントをまとめてみました。
文系か理系か?
早めに高1から意識しておきたい
文系・理系のどちらを選択するかで、大学受験で選択できる受験科目、ひいては受験できる学部の分野が決まります。つまり、文理選択は高校の勉強のゴールを定める意味合いもありますので、できるだけ早く、高1の秋から冬ごろには大まかに決めておきたいものです。
ただし、高2にもならないうちから、「私は文系だから、数学や理科はできなくてもいい。そのぶんのエネルギーを英語や歴史の勉強につぎ込む」などと、極端に決めてかかることはおすすめしません。国公立大学受験を見こした5教科7科目型の勉強を念頭におくとよいでしょう。
国公立大学に志願する場合、大学入試共通テストの受験が必須ですが、その際の受験科目は基本的に、
文系……「外国語(英語)」、「国語」、「地歴・公民から2科目」「数学2科目」「理科1科目」
理系……「外国語(英語)」、「国語」、「地歴・公民から1科目」「数学2科目」「理科2科目」
となります。
文系なら「英語と国語、地歴・公民の学習を中心にする。数学と理科は学校の授業で学びながら受験科目でどれを選ぶか考える」、理系なら「英語と数学、理科の学習を中心にする。地歴・公民は学校の授業を受けつつ将来の受験科目を見定め、国語が苦手だったとしても捨てずに努力する」といったスタンスで臨むのが妥当といえるでしょう。
「数学が苦手だから文系」などと決めつけない
文系・理系を決めるときに考えたいのは、「大学で何を学びたいか」「将来、どんな職業につきたいか」という2点です。ただしこの2点が高校生の時点で明確になっている人のほうがめずらしいでしょう。とはいえ、多くの本(*)や芸術、文化などにふれて自分の興味関心がどんな方向に向いているのか、アンテナを張る心がけはしておきたいものです。
*参考図書:「大学学部案内 学部コレクト」学研プラス(編) けーしん(絵)
https://hon.gakken.jp/book/1130491200
得意・不得意科目から文理選択をすることもひとつの手段ですが、おすすめしません。「数学が苦手だから文系にするしかない」というような消極的選択をしてしまうと、自分の選択を引け目に感じてしまうことになりかねません。
不得意科目はこれからまだ十分に克服できます。新しい先生との出会いで飛躍的に伸びるケースも。また、私立大学文系でも早稲田大学の政治経済学部のように数学が必須の学部も出てきました。早くから自らの選択の幅を狭めてしまうのは危険であると認識しましょう。
また、多くの最先端の学問において専門分野の垣根が取り払われている点(これを“学際的”といいます)も見逃せません。
たとえば、ドローンを自動車のように一般の人々が日常的に使えるようにする研究をするとします。
より高性能なドローンを開発するためには、モノづくりを学ぶ理系の工学を修める必要があるでしょう。
また、誰でも自由にドローンを使える未来を実現するにはさらなる法整備が必要で、文系の法学の知識も要求されるかもしれませんし、ドローンによってどのように社会に貢献し、ビジネスとして成立させるかを考えるには経営学や商学のことも知らなければならないでしょう。このように、ひとつの分野が複数の学問領域にまたがっていることも多く、文系・理系をわけることに大きな意味はなくなってきているともいえるのです。
学部・学科を選ぶ際に注意することは?
将来就きたい職業から逆算
学部・学科を選ぶ際には、まず、将来就きたい職業から逆算するということが考えられます。弁護士になりたいから法学部、商社で活躍したいから商学部、教員になりたいから教育学部といったケースです。ただ、繰り返しになりますが、高校生の時点で将来の夢が明確に定まっている人は少ないでしょう。
就きたい職業が明確になっていなくても、「就職に強い」という視点で学部・学科を選ぶことはできます。一般的に理系は専門職への就職に強いという傾向があるようです。医学部に入るのは学力的に難しいけれど、医療現場で働きたいと思うなら、臨床検査を専門に行う臨床検査技師や、主にリハビリの現場で活躍する理学療法士や言語聴覚士などを養成する学部・学科をめざすのもおすすめです。
文系でも、たとえば語学系の学部・学科でビジネスでも使いこなせるレベルまで語学力を磨けば就職活動でアピールすることができるでしょう。また、法学系を中心に、公務員試験対策に力を入れている学部・学科などもあります。会計学部や商学部などに入って、公認会計士や司法書士などの資格を取れば独立開業も夢ではありません。
「好きなこと」に関連した分野を選ぶ
将来の職業を念頭に選ぶほかには、その時点で自分の好きなこと、興味のあることに関連した学部・学科を選ぶというのが一般的です。ここで大切なのは、思い浮かべた「好きなこと」について、どうしてそれが好きなのか、それにかかわるどのような分野に興味があるのかまで、一歩深く考えてみることです。
たとえば英語が好きなら、英語にかかわる分野には、英語教育(教育学部など)、国際関係(法学部、国際関係学部など)、翻訳・通訳(英文学科など)、観光(観光学部、国際関係学部など)、国際的なビジネス(国際経営学部など)などさまざまなものがあります
また、たとえばスポーツが好きだとして、必ずしも体育・スポーツ系の学部・学科を選ぶ必要はありません。経営学部や商学部に入学して新しいスポーツビジネスについて研究することも可能です。また、文学部や社会学部などを選んで、スポーツ報道のあり方について学ぶこともできます。
一通り、興味のある大学のパンフレットを参照し、大学での学びを通して自分の興味のある分野が探究できそうか、学んだことが将来の職業につなげられそうか考えながら学部・学科を選びましょう。どんな分野に強い教授がいて、具体的に授業やゼミではどんなことが学べるかといった、より詳しい情報は大学の公式サイトを利用することをおすすめします。悩みや迷いが生じたときは、先生や親、大学生の先輩などにアドバイスを求めましょう。
学研プライム研究所スタッフ
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