2022年4月から高等学校では情報科目「情報Ⅰ」が必履修科目(以降、「必修科目」)となっています。新課程に対応する2025年からの大学入試にはどのような影響があるのでしょうか。
今回は、新科目「情報Ⅰ」・「情報Ⅱ」の概要と大学入試での出題予定について説明します。
高校生全員がプログラミングを学ぶ
「情報Ⅰ」が必修科目になったことによるこれまでとの大きな違いは、すべての高校生がプログラミングについて学ぶようになったことです。
約8割の高校生がプログラミングを避けてきた
これまでも高校には情報科の授業はあり、
「社会と情報」:プログラミングを学ばない
「情報の科学」:プログラミングを学ぶ
の2科目から1科目を選択する形になっていました。
例年、生徒のおよそ8割が「社会と情報」を選択し、プログラミングに触れることなく高校を卒業するという状態が続いていました。「プログラミングは難しそうだから、できればやりたくない」と考える人が少なくないようです。しかし、これからの社会を生きていくためには、コンピュータを理解し上手に活用する力はますます重要になると考えられます。
そこで2022年4月から新たに
「情報Ⅰ」:必修科目。プログラミングを学ぶ
「情報Ⅱ」:選択科目。「情報Ⅰ」をより専門的にした内容
として、高校生全員がプログラミングを学ぶことになりました。
「情報Ⅰ」を導入した背景としては、文系や理系、大学や専門学校などで深める専門性、将来の職業などを問わず、すべての日本人にパソコンやデジタル・データなどを有効に使いこなせる情報活用能力を身につけさせようという国の方針があります。
授業内容が一変するわけではない
データ分析の手法やプログラミング言語を学ぶ
「情報Ⅰ」で学ぶ内容は、これまでの情報の授業と一変するわけではありません。
昨年までの「社会と情報」と「情報の科学」で学習することに、少し新しいものが加わったぐらいに考えると良いでしょう。
「情報Ⅰ」では、ICT(情報通信技術)の基礎知識や、情報リテラシー(ネット上の情報などを適切に使えるスキル)、データ分析の手法、プログラムを動かすためにパソコンに入力する言語などを学びます。
具体的には、インターネットの利用状況を調査しグラフや表に直したり、スマートフォンなどで使えるスタンプや防災に役立つアプリを作ったりします。最終的には、ゲームのプログラミングや、データ分析から地域の活性化を考えるといったことも行います。
*大学入試センター「情報」サンプル問題(外部ページへ)
https://www.dnc.ac.jp/albums/abm.php?f=abm00040342.pdf&n=12_
「情報Ⅱ」は、企業で応用できるようなレベルに
「情報Ⅰ」をさらに専門的にしたのが、「情報Ⅱ」です。
「情報Ⅰ」が、“(提示された)ある目的を達成するためにプログラミングする”というレベルなら、「情報Ⅱ」は“(正解のない)ある問題を解決するために情報技術を活用し、情報システムを構築する”といったレベルになります。
例えるなら、「情報Ⅰ」は“配膳ロボットを正確に動かすプログラミングをする”くらいの話で、「情報Ⅱ」は“パソコンで運用できる企業の注文管理システムをプログラミングして、より売り上げが上がるよう、データ分析やAI(人工知能)などを活用する”ほどの領域にまで手を広げることになるでしょう。
2025年から「情報」が大学入学共通テストの出題科目に
大学入試センターはサンプル問題を用意
2025年1月に実施される大学入学共通テスト(共通テスト)から、「情報」が出題科目として追加されます。共通テストは、現状の「国語」「地理歴史」「公民」「数学」「理科」「外国語」の6教科30科目から、「情報」を加えた7教科21科目に再編される予定です。
共通テストでの「情報」の問題は、実際のプログラミングの穴埋め問題や、データ分析に関する考え方を問う問題などで、試験時間は60分、マークシート方式で行われる見込みです。
実施団体の大学入試センターでは、共通テスト「情報」のサンプル問題を公表しています。
*文部科学省の実践事例集 (外部ページへ)
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/mext_01342.html
大学入試に及ぼす影響は?
共通テストの「情報」を大学入試で各大学がどのように扱うかは、「情報」の出題が2025年とまだ先のこともあって、ほとんどが未知数です。国立大学では必修となるという予測もあります。
現時点でできる対策は、高校の情報の授業にしっかりと取り組むことでしょう。
今回は、新科目「情報Ⅰ」・「情報Ⅱ」の概要と大学入試での出題予定について説明しました。
プログラミングやITに苦手意識がある人は、市販のプログラミングの教材などで自分にとってとっつきやすそうなものを選んで、苦手意識を払拭する努力をしておくのも良いかもしれません。
学研プライム研究所スタッフ
学研プライムゼミをはじめとした映像教材を制作しています。難関大受験のための学習法をわかりやすく解説します。