
入試で課される小論文は、出題する形式がある程度決まっています。第3回では、典型的な出題形式について、それぞれの特徴を見てみます。わかっていれば事前の対策も、受験時の対応もとりやすいはずですので、それぞれ把握しておきましょう。
テーマ型の小論文
「~について論じなさい」と、テーマだけが提示される出題形式です。
与えられたテーマについて、社会的背景や多くの人が知っている事実のうちから、自分の論じようとする問題点をピックアップして、意見を述べていくというパターンです。そのテーマについての知識も問われます。具体的には以下のようなものがあります。
■ 端的にテーマのみ与えられる小論文
【テーマ例】「手」、「地球温暖化」、「最近あなたが気になったニュース」など
■ あらかじめ指定されたキーワードを使うよう指示された小論文
【出題例】「患者の権利」「インフォームド・コンセント」「信頼関係」「情報提供」「管理体制」のすべての語を使って「カルテの開示」について自分の考えを述べるよう求めるもの
■ 短文が添えられている小論文
【出題例】「最近の医学、とりわけ分子遺伝学の急速な進歩により、様々な遺伝病の出生前診断が可能となりつつある。しかし、遺伝病の出生前診断には人類にとって善悪両面があることが指摘されている」ことを提示し、遺伝病の出生前診断の是非について、受験者の意見を述べさせるもの
課題文読解型の小論文
一定のまとまった文章が提示される出題形式です。
最近の大学入試用小論文で一番多い出題形式で、あらかじめ課題文が与えられ、それをふまえた上で、設問にそって自分の考えを述べていくというパターンです。
課題文の内容を的確に把握し、それに基づいて自分の主張を組み立てなければならないので、「書く」能力とともに「読む」能力が必要とされているといえるでしょう。
また、このパターンの場合、小問で課題文の「要約」が求められることもあります。
■ 1つの文章が提示される小論文
【出題例1】「毎日新聞の社説」を読ませて、個人の遺伝情報の活用に関して、その利点と問題点を述べさせるもの
【出題例2】柳田邦男氏の著作「尊厳死と安楽死への視点」の一部を読ませて、安楽死について、自分の考えを述べさせるもの
■ 複数の文章が提示される小論文
【出題例】2つの文章を提示した上で、小問1では、二つの文章の要旨を、互いに関連づけながらまとめさせ、小問2では、「看護学を学ぶ自分が5年後あるいは10年後にどのような人とどのように関わっていると思うか」を2つの文章を参考にして述べさせるもの
■ 英文の課題文が提示される小論文
【出題例】いわゆる「クローン羊」について述べた英文を読ませて、クローン羊の誕生が、なぜ私たちに恐れを抱かせるのか、今後クローン技術はどうあるべきか、自分の考えを述べさせるもの
資料解釈型の小論文
図やグラフ、写真などのデータを示され、それをもとに自分の意見を述べる出題形式です。
課題文読解型の「文章」が、「図・写真」や「データ」に変わった出題形式といえるパターンです。出題例とともに具体的に紹介します。
■ グラフや表が与えられる小論文
このパターンでは、まず与えられた図表から「データを読み取る力」が問われます。「データの特徴」を読み取ったあと、そのデータを使って、自分の意見を論じていきます。
【出題例】「年齢別階級別死亡者数の推移」のグラフを提示して、今後10年の予測とその対策を述べさせるもの
■ 写真や絵が与えられる小論文
写真や絵画など、ビジュアルに訴えるものを見せ、それについて考えたことや感じたことを書かせる問題の場合は、ビジュアル的に提示されたものの意味をいかに言語化するかがポイントです。ビジュアルを言語化できさえすれば、あとは課題文読解型と同じと考えてよいでしょう。
【出題例】新聞に掲載された「ドナーカードを手にして」という広告を示して、自分の考えを述べさせるもの