学研プライムゼミ講師がわかりやすく解説!
古文と漢文からみた、新元号「令和」
学研プライムゼミ講師がわかりやすく解説
古文と漢文からみた
新元号「令和」
2019年5月1日、「平成」から「令和」に改元されました。4月1日の新元号発表時、出典となった『万葉集』に大きな注目が集まったのは記憶に新しいところです。そこで、学研プライムゼミでは、元号や『万葉集』に関する特別コラムを掲載。解説してくださるのは古文・荻野文子先生と漢文・宮下典男先生です。チェックしておけば大学受験でも役に立つかも?高校生の皆さんはぜひ読んでみてください。
新元号は『万葉集』から生まれた!
荻野文子先生
(学研プライムゼミ古文科講師)
平成に代わる新元号が「令和(れいわ)」に決まりました。国書を典拠とするのは初めてということで、『万葉集』が注目されています。
『万葉集』は、奈良時代に完成した最古の歌集です。「万の言の葉(よろずのことのは)」の名の通り、あらゆる歌を収めていて、詠まれた時代は約350年間、歌の数は約4500首、歌人も天皇から無名の農民まで幅広く、出てくる地名も約2500に及ぶスケールの大きさです。恋愛・家族愛・死者への哀悼・自然賛美などテーマもさまざまで、素朴なまごころを率直に詠んだ歌が多く、「日本国民の魂のふるさと」といわれています。
引用されたのは巻五の中にある「梅花の歌三十二首」の序文。天平二(730)年、大宰府(だざいふ)の長官だった大伴旅人(おおとものたびと)の邸宅で梅花の宴が催され、集まった役人たちが三十二首の歌を詠みました。その序文に「初春の令月」「風和ぐ」とあるのが、新元号の典拠です。序文は漢文体なので、ひらがなの書き下し文を添えておきます。
于時、初春令月、気淑風和、
ときに、しょしゅんのれいげつにして、きよくかぜやわらぎ、
梅披鏡前之粉、蘭薫珮後之香。
うめはきょうぜんのこをひらき、らんははいごのこうをかおらす。
「折しも、初春のおめでたい月、空気は清く、風もおだやかで、梅は美人が鏡の前で装う白粉(おしろい)のように白く咲き、蘭は貴人が帯の後ろにつける香袋(かおりぶくろ)のように薫っている」という意味です。澄んだ空気、やわらかな風、美しい白梅、蘭の香り。新春のすがすがしい光景が目に浮かびますね。
「令」の字には「令嬢」などと使うように「よい・すばらしい」という意味が、「和」の字には「おだやか・なごやか」という意味があります。そのように、人と人とが、あるいは、国と国とが、「美しく調和する時代」になるといいですね。
学者によると、この序文は、中国の詩文集の名文を下敷きにしているのだそうです。また、「梅」は中国原産の外来種で、当時はまだ珍しい花だったともいわれています。「国書といってもルーツは中国だ」という人もいますが、外国文化を胸いっぱいに吸い込んで新たな国風文化を発信するのが日本人の優れた柔軟性でもあります。これからも、他国との文化交流を通じて、日本文化がさらに成熟するといいなと思います。
動画で解説!
「荻野文子先生 特別ミニ講座~新元号は『万葉集』から生まれた!~」
中国人と「令和」
宮下典男先生
(学研プライムゼミ漢文科講師)
4月1日の正午前、スマホがしきりに微信(中国版LINE-WeChat)の着信を告げる。
中国の友人達だ。それからの数日間、新元号「令和」について彼らと侃侃諤諤(かんかんがくがく、読めたかな)の議論を戦わせたわけだが、彼らは日本の報道もよく調べていた。「令で命令を思い浮かべる」とコメントした政治家については、貧弱な教養力をさらけ出したと酷評。そもそも、「令◯」構造の二字熟語の場合、「令息」「令嬢」のように、「令」は通常「美しい」「立派な」の意で用いられるものなのだ。確かに「令」が命令なら、僕の姪っ子の「令子」ちゃんは「命令する子」になってしまう。「命令」の意になるのは、「軍令」「号令」のように「◯令」構造の場合なのだ。
言帰正伝(話を戻して)、中国の友人達が日本の元号をしきりと話題にしたがるのも、実は「紀元前に自分たちが始め、自分たちが捨て去った元号」をいまだに使っている我々が羨ましいのである。そう、我が国は、ある意味中国の伝統文化保存博物館なのだ。「お中元」は、道教(中国の民間信仰)行事の中元節ゆかりのものだし、「湯たんぽ」は、もとを正せば夏の「竹夫人」と並ぶ冬の抱き枕「湯婆子(タンポーズ)」だし、「孫の手」も、中国の仙女「麻姑」の手をかたどったものだ。
上海で教鞭をとる友人が嘆いていた。古文(つまり、我々の漢文)のテキストの「老子(老荘思想の祖)」を「親父(老子=親父は中国のスラング)」と訳してしまう「トホホな生徒」が普通に生息していると。実際、今の中国に漢文を正しく読める若者は少ない。一方、真っ当な日本の受験生は、「漢文」が読める。すごいことなのだ。諸君、是非「漢文」を学び、(大学合格はもとより)中国インテリが残した厖大な文化遺産に親しみ、三国無双の国際教養人を目指そうではないか。漢字文化にプライドを持っている中国人と対等に渡り合える教養、それが「漢文」なのだ。
講師の紹介
荻野文子先生
「マドンナ先生」として人気を博し、大手予備校で締め切り講座を続出させてきたトップ講師。丁寧な講義は古文が苦手な受験生にもよくわかると評判。
著書『マドンナ古文』シリーズは累計420万部超の大ベストセラー。
宮下典男先生
正しく学べば短期間で高得点をねらえるのが漢文。暗記では対応できない入試漢文が増加中。
漢文界の名物講師宮下先生が、基本から高得点の獲得まで鍛え上げてくれる。現大手予備校講師。
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